
みぞぐち・あつし ノンフィクション作家。1942年東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。
徳間書店編集者、博報堂勤務を経てフリーに。新宗教、暴力団、犯罪、食品安全性など様々の社会問題に取り組む。山口組に関する著作をめぐって、90年に自身が、2006年には子息が刺されるテロ事件に遭遇したが、その後も、精力的な取材・執筆活動を続けている。03年『食肉の帝王』で講談社ノンフィクション賞を受賞。近著に『暴力団』『ヤクザ崩壊 侵食される六代目山口組』『山口組動乱!!』など多数がある。
警察が住民を前面に立ててどうする
2011年(平成23年)10月、東京都と沖縄県が暴力団排除条例を施行し、これで47都道府県のすべてに同じような内容の暴排条例が施行されることになった。どの条例もおおむね理念とするところは「暴力団を恐れない」「暴力団に金を出さない」「暴力団を利用しない」「暴力団と交際しない」と要約されよう。暴排条例の担い手は暴力団ではなく、住民である。狙いとするところは暴力団の孤立化、資金提供の遮断といわれるが、業種によっては早くも住民側への弊害が指摘されている。

© The Sankei Shimbun& Sankei Digital 暴力団排除条例:横断幕を手にシュプレヒコールを上げる参加者ら=4月27日撮影、神戸市中央区(木下慧人撮影)
たとえば大手の宅配便業者が暴力団依頼の荷を扱わないと決めたが、小さなクリーニング店などが宅配便受付の窓口になる地域がある。暴力団がそのような店に荷物を持ち込んだ場合、差出元が組の名ならば、身分を質さずとも暴力団だと分かる。このようなとき、店番なり店主なりが身の危険を覚悟せずに、「お宅の荷は扱えないんです」と断ることはできまい。暴力を振るわれた後、警察が駆け付けてくれたとしても、ケガは自分持ちである。
宅配便業者が暴力団の荷を扱わないのは条例がうたう「利益供与の禁止」(*1)を守ろうとしてのことだが、それでは郵便局は差出人が暴力団名の郵便物を扱わず、差出人に送り返すのか。暴力団宛の郵便物は配達しないのか。水道、電気、ガスなどの供給業者は暴力団への利益供与に当たらないのか......など、次々疑問点が指摘されている。
条例が暴力団に対する嫌がらせに働き、彼らの棲息領域を狭めることは間違いないだろうが、それにしても暴力団の弱体化ないし壊滅は住民を前面に立て、住民の責任や危険負担でおこなうことではあるまい。暴力団に対抗できる武力を持っているのは唯一警察だけなのだから、警察が暴力団封じ込めの第一線に立つべきだろう。それが警察のつとめなのだ。
| 〈脚注〉 *1「利益供与の禁止」 事業者が、暴力団の威力を利用する目的で暴力団に利益を提供したり、暴力団の活動を助長する目的で暴力団に利益を提供することを禁じたもの。悪質な行為は、勧告や公表などの対象となる。 |
[基礎知識]暴力団の勢力は規制強化によって弱まるか? | ||
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2.暴対法の施行 | ||













